ブラジルで体感したサッカーの原点を日本に。集まった人で楽しむ「オープンサッカー」の取り組み

サッカーは一つのボールさえあればできるスポーツです。世界で2億5千万ものプレー人口がいるのは、シンプルでいて白熱するスポーツであるからに他なりません。

そのサッカーが文化として根付き、人々の生活に溶け込んでいる国がブラジルです。ブラジルの人は、サッカーが人を育て、感動を生み、生活に活力を与えることを知っています。人々は選手をリスペクトして、選手もそれに応えられるよう、ピッチで最高のパフォーマンスを披露します。

そんなブラジルに18歳のときに渡り、サッカーの本質を肌で感じた経験を持つ指導者がいます。現在は東京で、「FCトリプレッタ鶴川ジュニア」の監督を務める三比裕介(さんぴゆうすけ)氏。チームとスクールの他に、年齢・性別・レベルを問わず、集まった人でプレーする「オープンサッカー」を運営しています。

指導歴20年以上のキャリアを持つ三比氏が思い続ける、サッカーの原点について話を訊きました。

「サッカーは楽しむもの」、がいたるところにあったブラジル。本気で遊ぶ延長線に存在するパフォーマンス

18歳でブラジルに降り立った三比氏は、選手として活動するなか、すべての人が「サッカー通」であることにショックを受けたといいます。

「私がブラジルにいたとき、話題はいつもサッカーこことばかり。外に出ても、いたるところでサッカー談話に花が咲いていました。ブラジルの人々は、毎日がサッカーなんです。そして子どもであろうが老人であろうが、サッカーの知識は玄人レベル。特にお年寄りとサッカーの話をすると、いつまでも話し続けるんです。私にとっては大好きなサッカーに囲まれていたので、まさに天国でした。

ブラジルではメディアもサッカー第一です。新聞の一面やテレビのメイントピックは、いつもサッカーでした。日本でも同じくらいのメディア露出があれば、サッカー人口に大きく影響すると思います。」

また、所属しているクラブとは別に、プライベートで誘われるサッカーに、ブラジルの強さがあると三比氏は言います。

「私が所属しているクラブがオフの日に、集まった人たちでサッカーをするんですが、とにかくみんなうまいんですよ。ビール腹で明らかに走れないだろ、っておじさんでも、落ち着いてボールをキープしたり、おしゃれなパスをしたりと、そんなプレーの数々に舌を巻きました。

聞くと、そういったテクニックは遊びの中で身につけたと言うんです。また、テンポといいますか、彼らのタッチや間のとり方が独特で、簡単にボールを奪うことができませんでした。日本ではやれ基礎技術だ、戦術だ、と指導者が選手に伝えることで学んでいきますが、彼らはすべて遊びながら。日本式で育ってきた私にとって、その事実を受け入れるのは簡単ではありませんでした。

そこら辺にいる人みんな、サッカーがうまくて、さらにセレクトされた人がクラブで選手として活躍する。ボトム層に厚さが、ブラジルがサッカー王国と言われる所以であることを痛感しました。」

グラスルーツ層の厚みとレベルの高さに圧巻した三比氏。さらに「遊ぶ」という意味が、日本とは異なると強調します。

「例えば、日本では会社の人たちや同窓会でフットサルをすることがあると思います。ここでは『社交』の目的が強いので、ケガなく和気藹々と時間を過ごすことが目的になると思います。一方、ブラジルではそんな『遊び』はないんです。本気度がプロ顔負けの高さで、ボディーコンタクトはもちろん、ファールギリギリのプレーもどんどん仕掛けてきます。感情も120パーセント。プレーに納得行かなければ口論になることもありますし。

でも、ゲームが終わったら、みんななかよくビールを飲んで談笑しているんです。あの切り替えのはやさに、はじめは戸惑いました。こうしたシーンを目の当たりにしていくうちにわかったことは、彼らのサッカーにはファンやエンジョイというカテゴリーはなく、『全力で遊ぶ』、これに尽きるんだなと痛感しました。

日本のどんなスポーツでもいいのですが、『パフォーマンス』という言葉が使われます。しかし、アマチュアでプレーしている人に対して、『パフォーマンスがいいね』とは、なかなか使わないと思います。これはプレーの上手い下手で使われないのではなく、観客を魅了するほどのプレーをしているか否かだと思うんです。感情をむき出してプレーしているブラジル人は、すべてがパフォーマーでした。」

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三比裕介

三比裕介(さんぴゆうすけ)1978年生。18歳ときブラジルに渡りユーラカンFCでプレー。帰国後は指導者の道に進み、現在はFCトリプレッタ鶴川ジュニア監督。