一つの競技「ばかり」だと運動能力が低下する!?スポーツの原点から子どもたちの発達を考える

国内にサッカースクールが普及したことによって、選手はよりスキルアップができる機会を手にしました。世界の育成年代のコーチから、日本のジュニア(・ユース)の技術が高く評価される要因に、このスクールの存在が影響しているのは確実でしょう。

ひとえにスクールといっても、指導内容は多岐にわたります。シュートやドリブルの技術系からフォワードやゴールキーパーといったポジション系まであり、さらにフットボールの要素を細分化した特別コースも用意しているスクールもあります。私のアカデミーでも、ゴールキーパースクールなどを開設しています。

選手はチーム、スクール、そして先程紹介した特別コースなど、さまざまな環境でトレーニングを積むことができます。これにより、選手は技術だけではなく、運動能力も大きく向上するはずです。

しかし、スクールに通う選手の中には、競技に特化しないその他の動作が、極端に不自然なのを見かけることがあります。じつは、このように得意とする競技以外の動作が、不自然になってしまう「隠れ不器用」は意外と多くおり、私たち指導者や保護者が考えなければならい問題です。

全身に刺激を与える外遊びの減少と特定競技特化型が引き起こす落とし穴

学んでいるスポーツレベルは上がっているのに、学校などで行われるスポーツテストなどのデータはいまいち……。その原因の一つに「特定競技の特化型」が挙げられます。

子どもをスポーツスクールに通わせている保護者の目的は、「技術の向上」を第一に考えている方が多いように感じられます。指導者側としても、スポンジのようにあらゆるものを吸収してくれる子どもの指導は、大いにやりがいを感じます。

フットボールの場合だと「もっとドリブルがうまくなりたい」「シュートを正確に決めたい」「はじめの一歩を速く動き出したい」など、ストロングポイントをより高めたいニーズが多くあります。

そのため、選手は所属しているチームの他にスクールに通い、結果として一週間フットボール漬けになっているケースを目にすることがあります。もちろん、うまくなるにはトレーニングを積む必要がありますが、その前に「ジュニア世代の選手だからこそ」大切なことがあります。

それは、体が成長している時期に、いろいろな動作を習得することです。例えば、投げる・登る・泳ぐ・滑るといったものです。これらはフットボールで行うことが少ない(ない)動作です(もちろん、フットボールでも走る、止まるなどの動作が習得できます)。こういった動作を成長期に習得していくことで、自分の身体を無理なく操る(操作)ことができるのです。

では、身体の操り方を学ぶ絶好の年代であるジュニア世代から、ガツガツと特定のスポーツだけを行うとどうなるでしょうか。フットボールのフェイントはすごく上手なのに、前転(前回り)や後転ができない。ドリブルの切り返しは得意なのに、まるで体幹がないかのように鉄棒ができない。指導者や保護者からすると不思議に感じるかもしれません。

小さい時から、ある特定のスポーツばかり行うと、身体(脳)にはその動きに対する刺激しか受けず、他の動きをしようとしても、身体は学習していない(刺激を受けていない)ため、上手く実演できないのです。

そのため現在では、チームによっては身体と神経の調和を図ることを目的とした「コーディネーショントレーニング」を取り入れている場合もあります。コーディネーショントレーニングでは、脳からの伝達に対して、身体がスムーズに動くようなプログラムとなっています。

トレーニングの中に取り入れる他に、バランスのよい発育環境を整備することも重要です。シーズンスポーツ文化であるアメリカは、スポーツ選手がオフシーズンに入ると、自分の競技には全く手をつけず、他競技を行うのは有名な話です。

フットボール先進国である欧州クラブでも、シーズンを意識したトレーニング頻度が設定されています(ジュニア世代のトレーニングは週に2〜3回が最高頻度です)。未だに日本では「トレーニングを休むと下手になる」という迷信が確信のまま、部活やチームを運営している指導者がいるも事実です。

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平川正城

平川正城(ひらかわまさき)神奈川県出身。ユース年代は「清商」の愛称で親しまれたサッカー名門校、清水商業高校(現清水桜ヶ丘高校)から、湘南ベルマーレへ。湘南-草津-Y.S.C.C.-SC相模原とJリーグクラブを渡り歩き引退。スポーツをとおして、日本の子どもたちと世界の架け橋になることを目的とした「MASAKI SPORTS ACADEMY(MSA)」を2013年に設立。現在は海外仕込みのメソッドを日本人向けに改良した独自の「MSAメソッド」を確立し、日本全国のMSAにて子供達へ伝えている。JFAこころのプロジェクト「夢先生」も務める。