子どもたちの団子サッカーを自発的に解消させる方法

前回のコラムではU8年代の攻撃トレーニングについて紹介させてもらった。その年代の特性を生かすために、ウォーミングアップからすぐ体を動かせるトレーニングを導入したり、技術要素の中に少しの戦術要素を加えることで「何のためかという戦術的かつゲーム的な考え方」を身につける大切さを指摘した。

今回はU9年代での攻撃トレーニングについて掘り下げてみようと思う。

「団子サッカーはオッケーか?」

おそらく小学校低学年で一番最初に向き合い、そして一番大切な問いかけであり、だからこそ一番コアになるべき戦術的アプローチはここにあると思う。

「昔からそうやっていて、子供たちは成長しているから間違いではない」

「むしろ団子をこじ開けるような個の力が育まれるから問題ない」

「サッカーを始めたばかりのころはボールばかりに気持ちがいくから団子サッカーになるのはしょうがない」

そうした声が日本で現場の人から聞く。どれも一理ある。ただ、問題は「それが正しいかどうか」ではなく、「それが次の段階へのスムーズな一歩となるか」どうかだ。つまり団子段階でサッカーをすることが将来的にプラスになると言うのであれば、大人になった時に「団子状態」をかいくぐる必要性がある状況が、サッカーというゲームの中に出てくるという終着点がなければならない。ではラクビーのスクラムくらいの、密で相手が連続かつ同時に襲いくる中を真っ向から立ち向かうようなことがあるだろうか。ない。では、そうならないようなやり方を身につける術を考えたほうがいいではないか。

とはいえ最初からサッカーへの理解があって、視野を広げてプレーできることは至難の業。「だからしょうがない」ではなく、どうすれば試合におけるプレーを少しずつ身につけ、周りの様子に気を配るようになるのかを考えることが大切だ。だからこそ試合環境を考慮することがとても大切であり、ドイツにおける5人制は、子どもたちが無理なくピッチ全体を見渡せ、お互いのことを認知し合えるだけの人数で行えるという点でも大きなメリットがあると考えられている。

さて、トレーニングにおいてどのような取り組みが「団子サッカー解消」に効果的だろうか。サッカーゲームでは「ボール」「自ゴール」「相手ゴール」と3つの目的物が縦に並んでいる。だから子どもたちの意識がまずそこを行ったり来たりするのが普通だ。「周りを見ろ!」といわれても、なぜ見なければならないのかが伝わらない。外からの大人の怒鳴り声などの強制で、子どもたちの意識をロックするのはNGだ。子どもたちにしても明確な理由を見出せなければ、意識をすることもできない。ではどうしたらいいだろうか。意識的に、他のものへ興味を向かわせることが一番いい。

よく日本で見かける周りを見る練習として「首振りをしてからパス」というのがある。ある日、親子で自主練習をしているのをみかけた。お父さんがパスを出し、子どもがボールを受ける前に右、左と「首を振って」からトラップし、パスを出す。皆さんもやったことがあるのではないだろうか。

子どもたちは実際に何を見ているのだろうか。多くの場合、何も見ていない。それはそうだ。そこに見るべきものがないのだから。「見る」と「見える」は違う。人は意識を向けなければ「見る」ことはできない。そしてなんとなく「見えている」ものを意識することはできないのだ。「何を」という見る対象がはっきりしていなければ、そしてその目的がそこになければ、「首振り」をする意味がない。

だから「首振り」をしているのに、何も見ていない選手が増えてしまう。彼らが悪いわけではない。指導者に言われたとおり忠実に「首を振っているだけ」なのだから。認知しようにもそこにないもないのだから、認知のしようもない。

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中野吉之伴

中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/41歳。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス保持(UEFA-Aレベル)。01年渡独後地域に密着した様々な町クラブでU8からU19チームで監督を歴任。SCフライブルクU15チームで研修 を積み、現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督と、息子がプレーするSVホッホドルフでU9コーチを務めている。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。ナツメ社より出版の「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」は18年サッカー本大賞優秀賞に選出。WEBマガジン「中野吉之伴『子どもと育つ』」