小嶺イズムの継承者、スペインで得た知識と確信3

バルセロナは“蹴球馬鹿”が集まる街だ。バルサのフットボールに魅了され、ある者は休学し、ある者は職を辞してこの街にやってくる。中でも多いのが指導者。近年は現地で学んだ監督たちが続々と帰国し、日本で活躍しはじめている。

RCDエスパニョール・ジャパンアカデミーの責任者・吉住貴士もその一人。第3回は選手として現地で体感したスペイン人の上手さについて聴いた。

(取材・文=工藤拓)

スペイン人の上手さ

スペインにはボール扱いの上手さ以上に「フットボールを知っている」選手が評価される。対照的に、日本には「ボール扱いはうまいがサッカーが下手」と言われる選手が多い。その差は何なのか。

――実際にプレーしてみて感じたスペイン人の上手さとは

「パススピードと体の使い方ですね。スペイン人は簡単にボールを奪われない。パーンと綺麗に取れるというのがあまりないというか。ちょっと相手がコントロールミスしたところで寄せて行ってもなぜか足が出てきて、簡単に奪わせてくれない。

そこだけに注目してみるとはっきり分かるんですけど、スペイン人ならキープしようとする場面で日本人は蹴っちゃうんですよね。ドリブルが長すぎて相手に寄せられた時に、僕らはパスという選択しかしないか、蹴っちゃうんですよ。で、相手に当たって外に出るとか。こっちの選手はパスができないとなった時にキープに入る。体をぶつけて。ぎこちないですけど、体の使い方はうまいと思いますね」

――対照的に、日本人はボール扱いは上手いがサッカーが下手だと言われる

「1対1の練習とかはよくやっていると思うんです。1人かわすところまでは、みんなできるんですよ。でもその先が見えていない。こっちではフエゴ・コレクティーボ※というんですけど、5人以上のプレーが少ないですよね。2人組の関係はまだある。3人、4人くらいの関係性のプレーは少ない。そういう練習が少ないのかなと思います」

※フエゴ・コレクティーボ(Juego colectivo)。日本に概念として存在しない定義。直訳すると「集団的プレー」。「チーム全体で行うサッカーの基礎・基本」というニュアンス。下記の図を参照。

――日本のサッカーはインテンシティーが低いとも言われる

「これは個人的な考えですけど、よくデュエルとか球際とか言うじゃないですか。僕はそこよりも、その前の段階。ボールを持っていない時の予測。攻守における準備の段階だと思います。

例えばいい体の向きを早く作ってボールを受ける。それに対するマークはもっと早く予測して前に詰めないと自由にやられる。だから攻撃側の準備が早くなったら守備側も準備を早くしないといけない。こっちはそのやり合いなんですよね。

そしてそのためのコンセプト、アンプリトゥー(ワイドネス)、プレシオン・コレクティーバ(組織的プレス)といった概念がある。ボールを持っていない時の概念がたくさんあるので、そこが指導しやすい。それがあるから自然と攻撃も早くなるし、守備も予測が早くなるので、ボールを持った時の距離がすごく近いと思います。

で、そこからは個人の体の当たりの力だったり、経験によるところ。そこはもうスペイン人は強く行けとみんな言うから。だからインテンシティーの上げ方は強く行くってとこじゃないと思います。結局、予測が遅いのに激しく行ったらファウルになり、荒れた試合になるだけなので。

スペインの試合って激しく見えるけどクリーンなところが、特に育成年代とかはある。僕はそこかなと思います。ボールを持っていない時の攻守における準備の早さの違いかなと」

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吉住貴士

吉住貴士(よしずみ たかし)/1986年生まれ。長崎県平戸市出身。国見高―鹿屋体育大卒。長崎総合科学大学附属高サッカー部コーチを5年間務めた後、2013年に渡西。バルセロナの町クラブで育成年代の指導に当たりながらスペイン指導者ライセンスのレベル2(日本のA級に相当)を取得。17年の帰国後はスペイン1部RCDエスパニョールが開校したジャパンアカデミーの責任者として本場のフットボールを伝えている。