ドイツのU8/U9世代はなぜ5対5をやるのか【実践編】

8、9歳の子どもたちが自分たちのキャパシティにあった試合環境として、ドイツでは5人制を採用していると前回のコラムで紹介した。では実際にドイツでは、5人制のサッカーに対してどのようにトレーニングをしているのだろうか。

まずこの年代で求められる戦術はサッカーの入り口となるものだ。サッカーとはどんなスポーツなのか、どうすれば勝てるのか、どうすればもっと有利に進めることができるのか。ただボールを蹴りあったり、奪い合ったりするだけではなく、ちょっとでもそうしたメカニズムについて興味を持ってもらい、頭を使って相手と駆け引きをすることの面白さに気づいてもらえるように導けるのが理想だ。

だからといって毎回のトレーニングで小難しい話をして、子どもたちが頭に「?」マークを浮かべたまま、あっちこっちに走らされたりするのは明らかに間違っている。戦術とはピンとこない難しい言葉を並べられた理論のことでも、やらなければならないことを強制されるものでもない。

この年代の子どもたちの特徴として、とにかく体を動かしていたい衝動を持っていることを忘れてはいけない。子どもたちはトレーニング開始のその瞬間から思いっきり走り回りたいと思っている。長々とコーチの話を聞いたり、効果もない柔軟体操をえっちらおっちらしたり、その場に立ち止まってただパス練習をしたり、同じようなコーンドリブルをしたりするのはまったくもって望ましくない。

「子どもたちがトレーニングを集中してくれない」と嘆く指導者がいるが、集中してくれないのではない。このくらいの年代ではそもそも集中できるだけのキャパを持った子が、まだまだ少ないのだ。集中力がないのではなく、好奇心旺盛で興味津々なのだ。だから自分の興味があって、やりたいことに気持ちが向くのが自然だし、強制された集中力がないことは彼らにとって悪いことではまったくない。彼らは「何が楽しいかな?」という高感度のアンテナを張り巡らしている。だから「これだ!」というものをキャッチして、夢中になった時の彼らの集中力はすごいではないか。こちらの声が全く耳に届かないほど、のめりこめるという素晴らしい才能を持っている。無理やり集中させるということは彼らの持つ好奇心や多感性を奪っているということを、心にとどめておかなければならない。

トレーニングでもこうした彼らの特性を理解して、うまく利用することが大切になる。U8(7-8歳)の攻撃トレーニングについて図案を使いながら紹介したいと思う。

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中野吉之伴

中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/41歳。ドイツサッカー協会公認A級ライセンス保持(UEFA-Aレベル)。01年渡独後地域に密着した様々な町クラブでU8からU19チームで監督を歴任。SCフライブルクU15チームで研修 を積み、現在は元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督と、息子がプレーするSVホッホドルフでU9コーチを務めている。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。ナツメ社より出版の「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」は18年サッカー本大賞優秀賞に選出。WEBマガジン「中野吉之伴『子どもと育つ』」